そぞろ歩きな日々

自分の目で見たもの・体験したことだけを伝える雑記ブログ

『第2弾』動物実験の仕事についての質問まとめ(入社方法は?やりがいは??)

(記事作成2022.6.22更新2023.1.31)

動物実験の仕事に関して聞かれたことをまとめた記事、第2弾。

今回も、語ることができる範囲でどんどん綴ってまいります。

 

動物実験の仕事について聞かれたこと

業界に9年間お世話になった中で感じたことや体験したことを中心にまとめている。

動物系の仕事に興味ある方の参考に少しでもなれば幸いだ。

 

 

動物実験をやめた会社もあるけど、どうなの??

それぞれの企業戦略もあるだろうし、単にイメージアップ効果を狙っているだけかもしれない。

完全に動物実験をやめた(下請けも含めて)大手メーカーもあるようだが、その実情はぼくには分からない。

 

本音申せば、そんなニュースを聞いても「本当かなぁ」って懐疑的。

動物を使わずにどうやって商品開発しているのかは、実際にそのメーカーで働いてみないとなんとも言えない。

 

 

動物使用数は減っている

愛護の観点から実験に供する動物数を減らしたり、動物を使わない実験方法を優先するなど、各社それぞれで努力はしている

 

完全にゼロは現実的ではないが、今後も使用動物数は減っていくだろう。

 

 

 

 

動物実験の会社にどうやって入るの??

動物系の専門学校・大学を経て新卒入社するのが一般的。

転職するにも求人はほとんど出ていないし、異業界からチャレンジする人はかなり稀だと思う。

 

 

入社難易度はそこまで高くはないが、入社後に動物アレルギーになってしまったり、単調な作業に飽きて辞めてしまう人はチラホラいた。

 

飼育・実験作業は同じことの繰り返しなので、常に変化を求め「革新=善」な人は、たぶん肌に合わないかな・・・

 

 

動物に噛まれたことある??

入社間もない頃に、マウスに何回か指を噛まれた。

鉛筆が突き刺さったような鋭い痛さで、そこそこ出血もする。

 

また、動物の系統によってはかなり凶暴な性格な子もいる。

あまりに攻撃的だったので誰も手懐けることができず、試験が中断になったことが一度だけあった・・・

 

 

仕事するには資格は必要??

現場の作業員は、実験動物技術者の資格をほぼ全ての人が持っている。

 

厳しい職場だと、この資格がなければ実験業務をしてはいけないと決めているところもあるらしい。

詳しいことは以下の記事にまとめているので、興味ある方はぜひ。

 

 

 

愛護団体や活動家をどう思う??

海外の過激な人たちは、実験施設を襲撃し飼育されている動物を自然界に放つという愚行を晒したらしい。

 

「可哀想・・・」の正義が暴走し、遺伝子改変された動物を屋外に逃がしたせいで生態系が崩れるリスクには考えが及ばなかったのだろうか。

 

(正義が悲劇を生む場合もあるのだ)

 

日本だとそこまでの熱烈な団体は少ない(いない ?)し、聞いたこともない。

そもそも、動物実験に対してすべての人が許容してくれるとは思っていない。

 

ただ、ぼくの学校の知り合い(ペットショップ店員)から

「何でそんな会社に入ったんだ!!!」

「裏切り者が!!!」

と、激昂されたことはある。

 

 

現実を見ましょう

市場に出回っているシャンプー・歯磨き粉・食料品(安定剤や保存料・香料)・洗剤・薬などなどは、ほぼ全てが動物実験で安全性を確認されたものばかりだ。

 

それらの恩恵をガッツリと受けておきながら動物実験に携わる人たちを非難することは矛盾が生じる。

それは、一貫性がないただの偽善者ではないだろうか。

 

政治家や企業が「CO2排出ゼロ」「脱原発」「核廃絶」「ウクライナ」を宣言すると、一般市民は「素敵!!」と、コロッと騙されてしまう。

裏では熾烈な利害の駆け引きがあることを知らず「何となく良さそう」だけで善悪を判断してしまうのは、とても視野が狭いと思う。

 

「実現できれば素晴らしいけど現実に則していない理想主義」な考え方には、強烈な偽善を感じざるを得ない。

 

 

個人の思想は自由

コロナワクチンの(mRNA)も動物で実験を繰り返しているだろう。

コロナが怖いからワクチンは打つけど動物実験には反対ですとか、言動と行動がまったく伴っていないではないか。

 

「私は動物実験をしている会社の製品は買いたくない!!」

と思っているなら、個人で粛々とやっていれば良い。それを他人に強制するは本当に勘弁していただきたい。

 

個人の価値観や思想の違いはあって当然なので、動物実験に否定的なのは一向に構わない。

しかし、善と正義の押しつけは互いのためにならないと思う。

 

 

 

やりがいは感じる??

動物実験の仕事は「やりがい」をダイレクトに感じることは少ないかもしれない。

 

現場作業員の行動範囲は、せいぜい事務所〜実験室〜飼育室くらいなので、外部の人間と接する機会はほとんどなかった。

 

接客業のように「ありがとう!!」と感謝されることもなければ、営業職のように成果が目に見えるような仕事ではない。

 

ただ、ドラッグストアに陳列されている薬や病院で処方される抗生物質を見ると、

「この薬はもしかしたらあの時、自分が携わったものかな。。。?」

なんて、ついつい妄想することはある。

 

 

ドラッグストアの売り上げは微々たるもの

製薬会社の利益は、抗癌剤や治療薬など病院の医療用として使われるものが大半だ。

 

ドラッグストアで売られている一般向けの医薬品(オーバーザカウンター。略してOTC)の売り上げは、製薬会社の売り上げの数%くらいしかない。

 

もちろんOTCをメインにしている会社もあるが、医療用の薬のほうが利益がでるので、世界的にはOTCを撤退させ医療用医薬品のみで勝負する潮流になっている

 

 

 

 

実験動物と、どう向き合っている??

実験動物は

自宅で飼われるペット『愛玩動物』

動物園のように種の保存(絶滅に瀕している動物の保護)を担う『展示動物』

とは違い、実験に使うために生み出された自然界には存在しない動物

 

遺伝子組み替えや疾患を持っているなど、絶対に施設外に逃してはいけない動物も扱うので、愛玩・展示動物と同じような接し方(可愛い・モフモフしてる〜)は厳禁だ。

 

じゃあ、どうやって日々の業務と動物に向き合っていたかというと、

  • 一つ一つの作業を慎重に遂行して試験を絶対に失敗させない
  • 自分のミスで動物を死なせない

この2つは常に意識していた。

 

たった1回の些細なミスで数百万、実験の期間によっては数千万以上の損害を出してしまう。

 

エサをやり忘れた・エサの量を間違えただけでデータが狂い、試験が中止になってしまった事例もある。

 

人間の気の緩みやミスでのせいで数十〜数百匹の動物を死なせてしまう、そんなことが許されて良いはずがない。

 

それに、実験用に作られた決して野に放ってはいけない動物は、実験に使われて一生を終えることが一番の供養になると考えている。

 

『愛玩動物』『展示動物』『実験動物』人間がそこに関わる以上は、動物それぞれの役割をまっとうさせることが努めであり、命を預かっている責務を果たすのが道理だと思う。

 

 

最後に

この世に底辺職なんて存在しない。

 

自分が知らないところで自分の代わりに作業している人がいるから、なに不自由なく暮らせていけるし、そうやって社会は回っているのだと思う。

 

最後までご覧いただき、ありがとうございました